【漫画紹介】透明のヴェールを纏った利己の残酷『魔法使いの弟子が笑う時。』その1紹介編 4冊目
こんにちは!さわこです。
今回紹介するマイナー漫画はこちら!!
魔法使いの弟子が笑う時。
です!
今回はネタバレなしの紹介編となっております!
ですが、主要人物の登場タイミングの都合によりキャラクター紹介のみ2巻以降のキャラも紹介します。
内容は下の無料試し読みのみ触れます。
試し読みを先に読んでいただきますと、呑み込みがスムーズになると思います!
~お品書き~
概要
こちらの作品は金井千咲貴先生(金井千咲貴 (@chisakitamago) | Twitter)の作品で月間少年ガンガンで連載されていました。1~3巻まで刊行されており、単行本では完結されていますが、作者曰くまだまだ描きたいことがあるとのことなので今後の発展に期待です。
あらすじ
なまえ おうか
生まれつき感情が無い主人公生江桜歌はどんなことをされても何も感じない。
そんな彼は感情のある生活を送るために最強の魔法使いである拝島先の弟子になる。
桜歌が感情を得る方法、それは大切な人を殺したときのみ……
最後に掴むものは幸せなのか……
キャラクター紹介
生江桜歌(なまえ おうか)
本作の主人公で生まれつき感情を持たず「死にながら生きている」という少年。
魔力を結晶化する能力を持ち、「ぼく」が「悲しさ」を感じるために全人類を殺そうとしている。
拝島先
桜歌の師匠で、現在最強の魔法使い。
レヴィという使い魔と契約を交わしている。
桜歌が殺人をしないように保護している。
高憧ショウ
ヒーローに憧れるごく普通の高校一年生。ひょんなことから魔法使いの世界に巻き込まれてしまう。
守屋律
代々魔法で大量殺戮をすることを生業としている家系に生まれてしまった魔法使い。しかし、本人は殺人が嫌いで「こんな事のために生きたんじゃない」と脱出をする。
ショウに人助けをする「ヒーロー」について教わり、自身もヒーローになりたいと熱望する。
レオ・ケーニッヒ
魔法使いの名家であるケーニッヒ家に生まれ、魔法使いの元締めをしている。
幼馴染である拝島先に対して異常な執着とコンプレックスを持っている。
意識高いグッとポイント
この漫画の魅力は絵と内容のギャップにあります。
透明感のあるどこか儚い絵柄で描かれる深くヘビーな世界、それは映画『ミッドサマー』のような明るい異常性。
そして、主人公が自分の幸せを感じるために大切な人を殺さないいけないというジレンマに気づけないことへの違和感や、万能ではない魔法、一話から張り巡らされた伏線や謎など面白すぎる内容が美しく細い線でテンポよく描かれています。
少しでも気になりましたら是非購入して読んでみてください!
絶対に後悔はさせません!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
よろしければ他の記事も読んでいただけると嬉しいです。
また、コメントや共有をしていただけるとたいへんはげみになりなす!
また、ツイッターもやってますのでフォローよろしくお願いいたします!
では~ノシ
『3月のライオン』 その1 第1話を意識高く読んでみた 3冊目
こんにちは!さわこです。
マイナー漫画ではないのですが、大好きな漫画なので取り上げます。
~お品書き~
漫画における第1話
連載漫画において第1話は1番大切です。オチよりも大切なのです。
なぜなら
- 読者と作品の初対面だから面白い(面白そう)でないといけない
- 読者は0から作品を知っていくため必然的に1番情報量が多い
- ベテランになるほど読者の期待のハードルが高く、超えるのが難しい
などの理由があります。
また、第1話の中でも冒頭の10~20ページ目位には読み始めてくれた読者を手放さないための工夫があります。
今回はそういうところにも着目しながら読んでいきます。
あらすじ
主人公桐山零は幼い頃に事故で家族を失い父親の友人に引き取られ生きるために将棋の道を選んだ。史上5人目の中学生プロ棋士として世間を騒がせた彼は中学卒業後家を出て孤独にくらしていたが、近所の住む川本あかり・ひなた・モモ三姉妹との出会いをきっかけに様々な心の何かを思い出していく。
第1話 桐山零
本題です。
冒頭1~2ページ
冒頭です。
謎の女性が
「ゼロだって 変な名前ぇ」
と嫌味ったらしく不敵な笑みを浮かべてと言っている1コマ目。
「ぇ」が小さいのがミソです。
2コマ目は黒背景になって続けます。
文字の大きさは声の大きさです。いますよね~嫌味を言うとき抑揚をつけて嘲笑する人。まさにそんな感じです。「アナタに だってそうでしょ?」の間の取り方もわかりやすく嫌な感じです。
3コマ目
「家も無い」「家族も無い」「学校にも行って無い」「友達も居無い」とありますが、
「学校にも行って無い」「友達も居無い」のところをどちらも無理やり送り仮名まで「無い」と書かれているんですよね。
次のページ
「ーほら アナタの居場所なんてこの世のどこにも無いじゃない?」
とここで主人公が目を覚ましこれが夢だとわかります。
世界一嫌味な紹介でしたね(笑)
無い無い尽くしな彼目を覚ますとおもむろにベランダへ出るのですが、家にカップ麺、カレンダー、将棋盤、水のペットボトル、マットレス、将棋の資料……
ある意味生活感が無い!
3~15ページ
なんか暗いですよねこの漫画
そしてちらっと映るカレンダーの6月8日に印がされています。
着替えを済ませた彼はまっすぐ対局場である東京・将棋会館へ向かいます。
零が対局室に入り座布団に座り掛け軸を見ていると対局相手が入室します。
座布団に座りながら「元気だったか?零」と訊かれますが、答えません。
彼は零の育ての父である幸田さんです。
幸田は息子との久々の再開なのに天気の話しか出ない自分に呆れながら言います。
「じゃあ始めるか」
差し手が進むにつれ、零の回想が挟まります。
子供将棋大会で優勝したが、零は実の子ではない。
だから実の子たちに疎まれてしまう。
そんな過去を思い出しながら幸田を下します。
刃牙シリーズとは違い1話目で父を倒します。
表情一つ変えないまま。
幸田は「ちゃんと食べているのか?」と問いますが零は答えません。
去り際に「急に出て行って.…歩も香子も心配してるぞ……」と言い退室した後
「うそだ」
と初めて口を開きます。
この主人公15ページずっと黙ってるんですよ……
暗いですよねこの漫画
16~
帰宅途中に川辺で思い馳せているとメールが届きます。
今までの内容からは考えられないようなフォントですね(笑)
今晩はカレーだそうです。
さっきのカレンダーを思い返してみると6月8日は金曜日でした。
金曜カレーですね!!!
今回の意識ちょっと高い着眼ポイントです(笑)
羽海野チカ先生細かいですね!
零は体調が悪いと言って断ろうとしますが、あかりさんから福神漬けと玉子を買ってくるように頼まれます。
頼まれたら断れない性格を逆手に取られます。
しぶしぶコンビニによって川本家にむかいました。
「あーっれいちゃん来たー☆」
川本家に着くと一気に明るくなります。
ひなたが「れいくん試合どーだった?あかりお姉ちゃんが言ってたの 部活の大事な試合なんだって……」
と零に尋ねた。あかりはひなたに零がプロ棋士だと教えてないんですよね。
それは零のためです。
ひなたが零がプロ棋士だと知るとひなたは零の年収や立場を知ってしまいます。
ひなたはまだまだ子供なので無意識のうちにかしこまってしまうかもしれません。
零は繊細なのでそれを察知して通いにくくなります。
さっきのメールといいこの気遣いといいあかりさんはEQ(心の知能指数)が非常に高く人の気持ちをおもんぱかれる人物だとわかります。
また、次のコマで零が「勝ったよ」と初めて笑顔を見せます。ここが第1話で唯一零が笑うシーンです。
まさにここです!
作者が読者を手放さないための工夫です!
さっきの暗さを一瞬で忘れさせ、話しもしなかった主人公を笑わせたのです!
主人公がまるで別人に感じるということは違う話のように感じるということです。
一つの錯覚のようなものですね。
そしてカレーを食べているとテレビから息子によって父親が殴り殺されたという内容のニュースが流れてきます。
零はさっきの対局を思い返します。一手一手まるで素手で殴っているような感触がしたと……そして零は震えだしてしまいます。
また一気に最初の暗い話に戻るかと思ったとたん
「……れいくんどうしたの?寒い?」
ひなちゃーーーん!!
ひなたは温かい牛乳を準備しに台所へ走ります。
今はひなちゃんが温めてくれます。
そして少しは食べなさいとあかりに言われて場面が切り替わります。
零は食べえるとすぐに寝てしまい、三姉妹の祖父とあかりが零の心配話をして零のためにタオルケットを持ってきたひなたの場面に移ります。
ひなたは零が眼鏡をしたまま寝ているのに気づき、タオルケットを腰までかけると眼鏡を取ります。
すると零が寝たまま泣いていることに気づきタオルケットを肩までかけ、肩を撫でます。
ここで冒頭の暗い話とさっきの明るい話とのうまい擦り合わせをしています。
場面も居間だけど電気は落として隣の部屋と外の光が差し込んでいる、暗いけど明るい場面になっています。
ここでもまたひなたが温めてくれます。
「……おやすみ」
と言ってひなたは部屋を後にします。
舞台である東京の下町の川のコマで
「桐山零 これが僕の名前
大きな川沿いの小さな町で暮らしてゆく
C級1組五段17歳 職業 プロ棋士」
ここで第1話が終わります。
まとめ
非常に上手いですよね。
題名の通り桐山零の紹介の話です。
冒頭で零の一番暗い面を描き、中盤で一番明るい面を描き、終盤で混ぜる
それが僕、プロ棋士桐山零だ。と……
また、とても分かりやすくもあります。
ひなたが零を明るく照らして温めてくれる
名前の通りの存在ですね。
それでいてなぞも残しています。
なぜ三姉妹に両親がいないのか
など……
実に内容が濃く面白い第1話だと思いました!
よろしければ他の記事も読んでいってください!
では~ノシ
『乙嫁語り』その1 タイトルに込められた意味とスミスの正体 2冊目
こんにちは!さわこです。
今回取り上げる作品はこちら
「乙嫁語り」です!
~本日のお品書き~
作者について
作者の森薫さんは誕生日が1978年9月18日、東京都出身の女性漫画家です!
代表作は「エマ」「乙嫁語り」で、メイドさんと中央アジアが大好きな方です(笑)
漫画を読んでいるとわかるのですが、とにかく趣味全開な作風で書き込みがすごいです!
また、「中央アジアクッキング」が外務省のホームページで掲載されるなど、ご活躍されています。
あらすじ
舞台は19世紀、中東側の中央アジア。
12歳のハルガル家の跡取りである少年 カルルク・エイホンに嫁いできたのは北方の放牧民で8歳年上のアミル・ハルガルだった。
それでも二人のペースで夫婦関係を築いていく。
本作品は、この夫婦と周りの登場人物を起点に様々な出来事を美しく描いている。
タイトルが示していること
さて、本題です。
タイトルの「乙嫁語り」について考えていきます。
乙嫁とは「美しいお嫁さん、良いお嫁さん」という意味です。
この作品には、とても美しく素敵な女性がたくさん登場します。この作品はそんな彼女達の物語です………が、それだけでは少し足りません!
Wikipediaには「本作の語り部であるイギリス人青年。~一部省略~狂言回しの役割を担っている。」と書かれているがちょっとおしい!
というのも、私は
この作品の登場人物であるヘンリー・スミスが「私はこんな体験をしてきたんだ!」と読者に語っていて、それを聞いている読者の脳内のイメージを描いた作品だと思うからです。
狂言回しなんかではなく、内容のすべてがスミスの口からでたことなのです。
左の眼鏡をかけた男性がヘンリー・スミス
なぜなら、この作品のタイトルは「乙嫁語」ではなく「乙嫁語り」だから!です。
「語」ではなく「語り」だったら何なのか。
それは、「語り」になると口伝のニュアンスが加わります。それが大きな違いです。
例えば、伊勢物語や竹取物語の「語」は、「1つの題材の全体をつたえる話」「創作文章」の意味を持ちます。多くの場合文章そのものを指しています。
そうではなく、スミスが体験を語っているので「語り」なのです。
つまりこのタイトルが指し示しているのは、
「美しいお嫁さん達の話」ではなく「美しいお嫁さん達の話をする」ということなのです。
そう考えるとスミスというキャラクターの正体が見えてきます。
スミスの正体
この作品は中央アジアののことをスミスを通して漫画の中に入り込んだ読者が体験するという構図でできています。
漫画の外に出てみましょう。
実世界の読者はだれを通して中央アジアのことを知るのでしょうか。
中央アジアと読者をつないでいる人物はそう、作者である森薫先生なのです!
趣味全開の作品を読者にぶつける様子は、正に読者に体験談をぶつけているスミスなのです。
いや~面白い!作品の中に自分を登場させるクリエイターは宮崎駿監督などたくさんいますが、森薫先生は漫画の中でもブレませんね(笑)
以上、今回の記事はここまで!
読んでいただきありがとうございました!!!
では~ノシ